大判例

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大阪地方裁判所 昭和37年(モ)2661号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と判断〕この決定と次の第二民事部決定は、大阪地裁第三民事部が同一期日に結審し、同一期日に判決を言渡した農地売渡不服事件(三件)につき、各原告の代理人である同一弁護士から判決言渡前の同一日時に申し立てられた三件の忌避申立事件のうち、二件についての決定で、いずれも昭和五年八月二日大審院決定の見解を排斥して、終局判決言渡後の段階でも忌避申立の理由の有無を判断しなければならないとの立場をとり、異る見地からそれぞれその理由を詳細に示したものである。「裁判官に対する忌避の申立があつたときは、その申立についての裁判の確定に至るまで急速を要する行為を除き訴訟手続は停止することを要し、判決の言渡をすることは急速を要する行為に当らないから、第三民事部が右のように判決を言い渡したのは違法であるといわなければならない。この場合判決を言渡したことは違法で上訴の理由とはなるが、その判決は当然無効ではなく一応有効であり、従つて、裁判の公正を妨ぐべき事情ある場合に当該裁判官の裁判に関与することを止め裁判の公正に対する疑惑を杜絶しようとするための忌避の申立は右判決の言渡により当然その理由を失い申立は却下さるべきであるとの見解がある(昭和五年八月二日大審院決定、民集九巻七五九頁参照)。右見解の趣旨とするところは、違法な判決の言渡にせよ、言渡があつた以上、忌避の目的を失い申立につき裁判を受ける利益を失うとするものと解せられる。しかしながら、右のように解すると、もし忌避を申し立てられた裁判官が忌避の申立につき実質上の当否の判断を回避する目的で申立を無視して敢えて判決をした場合には、忌避申立人は、忌避申立の当否に対する実質上の判断を受ける機会を失することとなり、民訴法が忌避の制度を認めた趣旨を没却することとなる。こう場合には、本案判決に対する上訴審において上訴の理由として主張することができ、上訴審は忌避申立の理由があるか否かにつき審査すべきであり、これにより救済されるとの見解もあろうが、本来本案訴訟と忌避申立事件とは別個の事件であり、後者は事柄の性質上急速に処理することが望ましいので、民訴法はこれを決定手続で審理することと定めている。決定ですべき事項を判決の理由中で判断することの許される場合のあることは勿論であるが、忌避の事由の当否については迅速な処理のできる決定手続により迅速な審理をし、申立人の抱く裁判の公正に対する疑惑に対する判断をすることが忌避制度を設けた趣旨に合するものと思われる。次に、判決の言渡により忌避の理由が当然消滅し、忌避申立の利益がなくなるか否かにつき考えてみるに、申立人の側においては、本件におけるように第一審判決に対しては控訴の申立により民訴法第四二条違背を理由として原判決の取消を求めることができ、控訴審が原判決を取り消し差戻した場合、上告審の差戻判決の場合のように原判決に関与した裁判官は差戻後の裁判に関与することができない旨の民訴法第四〇七条第二項のような規定はないから、原判決に関与した裁判官が差戻後の事件に関与することも法律上可能である。しかし、忌避申立事件につき実質的当否の判断がなされ、もしその理由があるとの裁判が確定した場合には、右裁判官は差戻後の事件には法律上関与することができなくなり、忌避申立人は、裁判の公正に対する疑惑を抱く裁判官の裁判を受けないという利益を有する。裁判所側においては、忌避申立を受けた裁判官が忌避申立についての裁判確定前にした判決は、その後右申立が理由なしとして排斥され、その裁判が確定するときは、有効となるものと解するのを相当とする(昭和二九年一〇月二六日最高裁判決、民集第八巻第一〇号一九七九頁参照)から、忌避申立事件につき実質的審査がなされ、忌避申立が理由がない(特に訴訟遅延の目的をもつてする忌避権の濫用である場合)として却下され、該決定が確定することが、上訴審の裁判に重大な影響を及ぼすのであつて、この点においても、忌避申立事件において実質的判断をする必要と利益とがあると解せられる。」

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